志村双葉の徒然コラム


出産というタイミングを活かす

鉄は熱いうちに打つ、その大きなタイミングの1つが出産です。
出産は単に子供が出てくるだけではなく、子供という人間が自発的に起こす、最初の行動です。出産は子供の意思によるもの。それゆえ、「自立の力の一歩目」を体験させてあげられる、最初の機会でもあります。私たちはそれに対して、最大限サポートしてあげるだけ。できるだけ子供の要求に従って、子供が出たい時に出たい形で出してあげる手伝いをする、という認識で臨むべきでしょう。
1つには、手を当てて、気をかけること。お腹の赤ちゃんの頭がある位置に手を当てて、気持ちを通わせることが大切です。
2つ目は、生まれてきて最初に入れるお湯の温度に気をつけることです。たいてい病院では41~42度のお湯を使いますが、事前にお願いして、38度前後(お母さんのお腹の中と同じ温度)にしてもらう。ちょうど、プールからあがると肌の水分が気化して寒く感じるのと同じように、生まれたばかりの赤ちゃんの肌は濡れていて、外気に触れると「寒い」と思う。そのあと41度のお湯に入れられると、熱湯のように熱く感じてしまうのです。初めての温度差にびっくりして、赤ちゃんは恐怖を感じる。世の中に出てきてはじめて感じる感情を「怖い」にしたくありません。38度であれば、元いた場所と同じ暖かさを感じて、安心できるでしょう。
3つ目は、石けんを使わないこと。赤ちゃんの皮膚は未完成で、皮膚というよりは泌尿器の一部と考えた方が良いと思います。体温も高く、汗もよくかきますが、ここで排せつのコントロールをしており、非常に敏感な臓器の一部です。そこを化学的な石けん成分でごしごしこするのは、感受性をすごく損なう。生まれたての時は体脂がついていて、それを落とすために石けんを使う病院は多いようです。でも、体脂は敏感な赤ちゃんの皮膚を保護できるもの。だから例えお湯にすぐ入れられない状況で出産しても、すぐに皮膚が干上がってしまうことがないのです。子供の皮膚を守っているものを、無理にこすって落とすようなことをしない。なるべくなら、人間に本来備わっている機能で健やかさを保つことが、自然なありかただと思います。
そして、初めて聞く赤ちゃんの産声。
お腹の中で赤ちゃんの背骨は丸くなっていますが、狭い産道を出てくる時にはじめて背骨が伸び、赤ちゃんの骨盤にカチッと入る。そこで初めて体の機能のスイッチが入り、肺呼吸がスタートして、産声を上げるのです。

2007/Apr 志村双葉