家庭においても企業においても、ほめるのも叱るのも難しいものです。最近は「ほめて伸ばす」とよく言われ、それも確かに効果のある方法でしょう。
でもやたらとほめすぎると、やがて何でも「ほめられるために」やるようになる。ほめてくれないと達成感が得られなくなるという面もあります。 ほめるの安売りも、実はあんまり良いことではないのです。ほめるのはある意味、安直にできること。ほめっぱなしでは、心を育てられません。 幼稚園でも、何かが出来た瞬間にすぐ振り向いて大人の顔を見るお子さんを見かけます。それは評価を得られたかどうかを、その場ですぐ知りたいから。 「何かがやりたい」というより「ほめられたい」という気持ちが行動の動機になっているのかもしれません。
この気持ちは、競争社会の根源に横たわっていると言ってもいい、と思います。人よりも優秀であることは「ほめられること」、ほめられることがないと不安になる。何かを頑張る動機はというと、評価を得たいから。こうした価値観に疑問を抱かないお母さんに、「子どもが評価を得ることが、何になるの?」と問うと、「だってないよりはあった方がいいでしょう」という答えが返ってきます。お母さん自身も「評価を得られる子供を作ったお母さん」という評価を手に入れたいのでしょうか。
実は、気持ちをこめて叱ることの方が、投げられるエネルギーの玉は大きいのです。
大切なのは、「気をこめる」ということ。
子供が一番お母さんに求めているのは、気にかけてくれることです。それは、愛情をかけるのと同じこと。 問題は、この愛情の込め方を私たちは良く理解していない、という点にあります。 闇雲に世話をするのも、動機は愛情でしょう。必要以上ににほめるのも、しかるのも、子供のためをよかれと思ってしているのだから、これも動機は愛情なのだけれども、問題はそこに「子供の心を育てる」という意識が働いているかどうかということ。
こうやってほめること(叱ること)が、先々どんな子供の心を形成していくのか、想像してみることが大切だと思います。
2007/Apr 志村双葉
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