女性と言えども、妊娠をしたから即、一人前のお母さんになれるわけではないと思います。
お腹に赤ちゃんが入ったことで、とりあえず「母親として自分が成長しなくてはならない」というモチベーションは与えられることになります。ただ、モチベーションは与えられても、具体的にどうしたらいいか、その「どう」が見えないということに、そもそも今の時代の子育てに関する混沌が始まっているのではないでしょうか。
本来なら、受け継がれているものが体にしみ込んでいて、それが母親になった瞬間に思い出されたり、昔自分のしてもらったことが自然に出来るシステムが、人間の中にはあったのでしょう。いわば祖先の知恵の結晶である育児方法の伝承が、本能的になされていた。そしてそれは、ヒトが命を紡いで生きて行く上でものすごく重要なことなのに、現代においてその部分の記憶がすっぽり抜け落ちているのは、なぜなのだろう、というのが私の大きな疑問なのです。
妊娠、出産、育児には「これが正解」というマニュアルはありません。だれかに明確な方法を教えてもらえば良いというものではなく、本当はひとりひとりがちゃんと考えなければいけない時代を迎えているのだと思います。それなのに、考えるための知識、ヒントのようなものがあまりにも身の回りには少ない。どうでもいい知識、情報が山のようにあっても、その中で必要なものを選択するには、基準となるための自分の指針がなければ選べないのです。自分はどちらを向いて子供を育てていけば良いのか、途方にくれているお母さんは多いと思います。きちんと向き合おうとするお母さんにとって、今は過酷な時代と言わなければなりません。
また一方で、子育てに関しては「世間は世間、ウチはウチ」というパーソナルな問題だという理由で、改めて考え直すことをしりぞける向きもあります。確かに本来育児は「常識」という範囲に入るべきことだったと思うのです。でも今や、この「常識」はすごく怖いもの。私たちが親世代から受け継いだ常識は、本当に常識なのか?と問い直してみる必要があるかもしれません。
私も、子供が宿ってから初めて、自分の中に母親としてどうするべきかという答えがないことに気づきました。右も左も分からない暗闇の中でもがいている時、わずかなヒント(光)でも与えてもらえると、なんとかそこに向かって進んで行く、というようにして手探りで自分なりの道を見つけてきた。私にとっては、偶然出会えた整体の育児の考え方が、とてもありがたいヒントでした。そして、それを実践する中で分かったきたこと、それが「ちょっとしたコツ」だと思うのです。
例えばケーキを作るのでも、こうやった方がよく空気が入るよ、という泡立て方のコツがありますよね。別に必ずしもそうしなければ泡立たないわけではないけれど、そうやった方が無駄がなく、美味しいケーキがふんわり焼けるのだとしたら知っていた方がいいじゃない?というようなコツ。
もしかしたら、私が助かったように、これを聞いたら助かる人が他にもいるのでは?と思うのです。そんなちょっとした事を、少しずつ綴っていきたいと思っています。
2007/Apr 志村双葉
- 近頃「もっとコミュニケーションが必要!」と思われる場
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- 「気付き」と育児
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- 親としての一番の役割とは?
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子育てと仕事
出産・育児について
- 現代において「お母さんになる」こと
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- 親を試す
- 「自分の育児の道」を探すお母さんへ
- ほめることと叱ること
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- 子供に託す理想はちゃんと持とう
- 心を育てる妊娠中の過ごし方(1)
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- 出産というタイミングを活かす
- 手は出さずに見守って育てる
- 言葉と感受性が結びつく