志村双葉の徒然コラム


心を育てる妊娠中の過ごし方(3)

妊娠6、7ヶ月目を過ぎたら、どんどん話しかけましょう。伝えたいことは「生きることは楽しいよ」というメッセージ。お腹の中にいる時から「生きることは厳しく苦しく大変だけど生きていかなくちゃいけないのよ」と伝えるよりも、出てきた時に「この社会は自分を受け入れてくれるところ」と感じられるようにしてあげる。これから出て行く社会を子供はまったく知りません。でも、新しいところに不安いっぱいで出てくるのと、「大丈夫」だと思って出てくるのでは、大きな違いがあります。
「愛してるよ」というメッセージもその1つです。とりわけ日本人は、お腹の中にいる時はそういうことをよく話しかけるのに、生まれてきてしまうとちゃんと言葉にして言わなくなったりしますね。日本語文化の中では「愛している」と言う表現は歴史の浅いものですが、じゃあこの気持ちはなんと表現すればよいのだろう?と考えると「愛している」としか言いようがなかったりする。それを伝えたからと言って照れることもないし、子供も迷惑とは思わないでしょう。
大事なのは「この思いを伝える」ということです。それは言葉、抱きしめること、ちょっとした思いやりでもいい。その思いを、ストレートに表現してしまった方が、楽な時もあると思います。

問題は「伝える」ことをあまりにもしていない、ということ。親子にも夫婦にも見られる「言わなくても分かるでしょ」という過信は、日本独特の文化です。確かに、全ては言わなくても分かり合えるところが日本の文化の美徳でもあります。それが「言わなくても察すること」、おもいやりや、繊細な表現を生み出してきた側面もある。しかし何も言わない→何も思わない、何もしない→何も起こらない、になってしまったら、何もいいことはありませんよね。
とは言え、あなたのことが大好きという思い、愛情がちゃんとあるなら、それがどんな形であれ伝わるものです。裏を返せば、敵意を持っている人からは、何にも言わなくても敵意は伝わってきます。目には見えないけれども、コミュニケーションの力はあなどれません。
2007/Apr 志村双葉