志村双葉の徒然コラム


心を育てる妊娠中の過ごし方(2)

妊娠してから5、6ヶ月目、胎動が起こる頃には、心の感受性の機能は万全です。その時期には、しっかりと「気」を向けてあげます。
四六時中、全部の気を向けている必要はなく、体は家事や仕事をしていても、気持ちはどこかで子供に向けているという形でも良いのです。そうすると子供は、この狭い空間(エレベーターのような)に二人で一緒にいる人間として、もう一方の人間からちゃんと配慮されているということが分かる。つまり「人の気持ちが分かる」人間になるし、落ち着いた子になります。無視された人間はひとの気持ちは分からない。自分に向かって気をちょうだい!ということばかり考えるようになります。
とても自然に、お腹に向かって話しかける妊婦さんもたくさんいらっしゃいますね。それはかわいいからもあるけれども、やはり別の人間としての配慮だと思うのです。こちらの都合で動いたり、重いものを持ったり、パソコンに向かったりいろんなことをしてしまうから、それを一言お断りしておく、という配慮。目に見えたことや感じたことを共有しようとするのも、自然な行為だと思います。お散歩していて、きれいな花が見えたら、「きれいな花が咲いているよ」「あなたが生まれてきたら見ようね」とか。 要は、相手をちゃんと一人の人間として認めて、「人としての礼節をわきまえて過ごす」という当たり前のことを実践することです。
子供は一人の人格者であり、あなたの「もの」ではない。これは、この先の育て方にも通じる、根本の部分だと思うのです。「私のもの」と思うと、「私が感じたことは子供も同じに感じるはず」という根拠の無い前提で子育てしてしまう。すると子供には、自分の存在が根本的に認められているという深い満足が起こってこないのです。
気をかけて、話しかけてこの時期を過ごすと、感情のコミュニケーションができるようになります。
「楽しいな」と私が思っている時には、お腹の子供にも「楽しいってこんな感じ」という感触が伝わります。だから出来れば、つらい・苦しい・悲しいことをたくさん感じるよりも、嬉しい・楽しい・良いことをたくさん感じたい。妊婦だって人間ですから、いつもいつも天使のようではいられませんよね。ですから一日の中でちょっとでもいいから、一番楽しいことを空想して、その楽しみに身を委ねられる時間を、ちゃんと持てばいいと思うのです。別にお決まりの胎教ではなくても、自分の感受性にとって心地よく、生きていることは楽しい!、と感じられることを。そういうお母さんのお腹の中で過ごした子供は、やがてそういうものを受け止めた時、どういう風に自分は受け止めるかが分かって生まれてくると思います。

妊娠5、6ヶ月めのこの時期には、もう1つ大きなポイントがあります。この時期、大脳の細胞分裂が、人生最大級のスピードで進みます。そのテンポを促進してあげるためにできることは「散歩」。歩く時のポイントは、両手に何も持たない状態で歩くこと、それと、13歩目の歩幅を大きくゆっくり数えることです。それまでの12歩が四分音符くらいだったら、13歩目は全音符、というリズムです。そのテンポが子供の大脳の細胞分裂を促進して、良い記憶力を作ると言われています。こればっかりはやった人とやっていない人の完全なデータがあるわけではありませんが、やらないよりはやった方が良いかな?くらいのことです。

こういうコツが何を示しているかを考えた時、一言で言うと「鉄は熱いうちに打て」ということだと思うのです。四六時中勉強しろ勉強しろと言っても勉強できるようになるとは思わない。でも本人が「そろそろ勉強しなきゃ」と思っている時にちょっと背中を押してあげるのが功を奏すのは、まさに「タイミングが良かった」から。
子供が大きくなっていく過程で、何かそれを促すタイミングがあるのだったら、それをうまく押してあげるのは、やらないよりはやった方がいい。脳や体が、人生の中で一番驚異的なスピードで成長していく妊娠中にも、そのタイミングのいくつかがあることを知っておいていただけたらと思います。

2007/Apr 志村双葉