プラズマニュース


フジサンケイ ビジネスアイ 日曜版 Sunday i 2006/6/4
「ウーマンWOMAN / わたし起業しました」
フジサンケイ ビジネスアイ 日曜版「今は産めない。じゃあ、いつ産むのか」。止まらない勢いの少子化社会、仕事と子育ての両立になかなかポジティブなイメージが持ちにくい。そんな中、「仕事も子育てもどちらも絶対できます!」と、市場調査などを手がけるプラズ・マ社長の志村双葉さんは断言する。パワフルな体験談は、先輩からの力強いエールだ。

「産んでも仕事、できます!」


最初は惨敗
「大卒の新人女性社員2期生が、高卒ベテランに認めてもらおうと思ったら、仕事の実力を見せる以外ありません」
世は男女雇用機会均等法施行後の間もないころ。女性総合職を採用する企業だけ選んで試験を受けた。就職を決めた百貨店で大卒女子2期生。「まずは現場」と、靴売り場に。やがて部下となるベテランたちの中で、新卒の「エリート」はこっぴどくしごかれる。社員用通路の壁にベテラン社員と新人の売り上げ足数対決が、3時間ごとに張り出された。
「最初は惨敗。だから、どうやったら経験のない自分が売ることができるのか、考えるんです」
23センチなら23センチの靴を始業前にすべてはいて確かめた。靴幅が狭かったり、甲を包み込む面積が深かったり、メーカーによってはき心地が違うのを体で覚えた。一目見て、客の足のサイズ、甲高や幅広、華奢などの特徴を見抜けるように観察した。客との会話から引き出した情報で「相手はどんな靴が欲しいのか」を集中して考えた。一日の売り上げ足数が、ベテランの先輩陣を抜くのに長くはかからなかった。「あの子は努力してるもの」。実力を認めると、自然に周囲は味方になってくれた。「そのときのモノを売る創意工夫は、今のマーケティング調査という事業のベースです」
しかし、入社3年で売れっ子販売員は社内結婚を機に会社を辞める。「社内結婚なら女が辞める。そういう風潮でした」


モノを売る力
次の就職先は、広告代理店。採用面接で広告デザイナー志望者がひしめく中、「私の作品はモノを売る力」と直感した。面接官5人全員を客に見立ててネクタイを勧めてみせて決まり。「顧客が何を求めているか。商品の本質は何か」を見抜く洞察力とそれに応えてみせる行動力で、引っ張りだこになる。
30歳で妊娠に気付いた。辞めるのか。辞めないのか。生んでから考えようと思った。生まれたての娘の顔を見た瞬間に思う。
「あー、無理。こんな大切なものを人の手に任せられない」。産後の体を引きずり、公衆電話で会社に退職の意思を伝える電話をかけた。
「出産も育児も本当に楽しくてたまらない経験。それは仕事にも生きてくる。今の若い人は、頭で考え過ぎだし、社会は出産をネガティブなことに仕立て上げようとしているみたい」
仕事への復帰を不安に感じ、出産・育児をとまどう現代の女性に言いたい。「産んでも仕事、できます!」
娘が3つになるまで育児に専念。娘を連れて通った砂場のそばに、全国フランチャイズのパン屋があった。「再就職が難しいなら、このパン屋さんでいい。その代わり1年後に店長、3年目に本社マーケティングに必ず行くと思ってました」
昔の仲間に送る年賀状に添えた「何かお手伝いできることがありませんか」のメッセージをきっかけに電話がかかり出す。フリーで海外有名ブランド化粧品の市場調査リポートの仕事を受ける。娘を幼稚園に送ったその足で、デパートに出かけて店員の販売力、クライアント(顧客)ニーズとのマッチング、広告効果、デパートの経験を生かして客数から1日の売上高見込みをたたき出す。
評判となり次々に仕事が舞い込み、01年に顧客の要請で会社化した。「相手が望んでいるより、ちょっと多くを返す。すると次のチャンスにつながるのです」
出産も仕事も家族も「したくてすること。何も無理なことはない」。人生を「生ききる」覚悟で進む姿が、すがすがしい。 (滝川麻衣子)



ニュース

新聞・雑誌の掲載